1場

 電車(でんしゃ)線路 (せんろ)道路 (どうろ)のあいだには(ふる)枕木 (まくらぎ)(さく)があって、 柵をつなぐ 一番 (いちばん)下の 針金 (はりがね)にひさちゃんは ()ります。そして上の針金につかまって、三本(さんぼん)ある線路のむこうのプラットホームを、キラキラ(かがや)く目で 見守 (みまも)るのです。 山手線池袋駅 (やまのてせんいけぶくろえき)がまだ小さい 木造 (もくぞう)駅舎 (えきしゃ)だった(ころ)のことです。
 三台目(さんだいめ)の電車が()きました。三、四十人ほどの人が()りて、ホームはずれの(くだ)階段(かいだん)()かいます。その中に、会社帰(かいしゃがえ)りのお母さんの姿(すがた)(さが)すのです。一両目(いちりょうめ)、二両目、三両目……。
「あっ、お母ちゃん」
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